工務店の資金繰りの注意点

許認可等関連

財務担当として

私は、住宅メーカーの財務を通算15年ほど担当していました。担当の間に、バブルの崩壊、97年の消費税引上げの反動落ち、リーマンショック等の売上高が大きく落ち込むタイミングを経験しました。これらの景気後退局面で住宅会社の資金繰りがどのように影響するのかも嫌と言うほど経験しています。

ついては、今回は、工務店の資金繰りでぜひ注意してほしい「3つのポイントについて触れていきたいと思います。
途中理解が難しいかもしれませんが、図やグラフで、ポイントだけイメージをするだけで十分です。

注文住宅メインの工務店は資金が余る

1棟の住宅を販売する資金繰りで、その1棟に関する資金の回収や支払がすべて済んだ場合、最終的には、1棟分の利益のみが手元に資金として残るはずです。

ところが、事業を継続的に営み、つぎつぎと受注・引渡が続き、完工高が横ばい、もしくは増加している間は、一般的に、回収期間・支払期間の差によってかなりの資金が手元に溜まっている状態、すなわち、お金の余る「負の運転資金」となります。

資金余剰「負の運転資金」となる理由

具体的には、一般的な注文住宅メインとする工務店の場合、販売先である個人顧客からもらうお金は、契約・着工・上棟・引渡時、もしくはローンを利用する施主の場合は契約・引渡時といった、完成工事高(売上)計上よりも前のタイミングとなると思います。

【完成工事未収入金など営業性の資産は、比較的短い間にお金になる

支払は、業者払いが多いので、〆後の翌月現金や手形払いとなるケースが多いと思います。

【工事未払金など営業性の負債は、比較的遅れてお金支払う

何を言おうとしているかといいますと、注文住宅工事をメインとする工務店の資金繰りは、回収が早く・支払が遅いことから、以下の図の様に、問屋などの場合は在庫などのため運転資金が必要で銀行借入等でまかないますが、一般的に注文住宅メインの工務店の場合は、手元に現金が余ります(負の運転資金)。

実際の住宅メーカーのケース

以下のグラフは、ある注文をメインとする上場住宅メーカーの対外発表資料を参考に、1年間の「運転資金」の移り変わりをグラフ化したものです。

きりが良く解りやすいので、「2021年代第1四半期」のデータで説明しますが、販売用不動産を除く運転資金は、資金が要るどころか、222億円余っています。注文住宅を販売している工務店も、一般的にこんな感じで手元に資金が残ります

販売用不動産を買ってしまうことが多い

ただ実際は、この事例では230億円を使って販売用不動産を買っているため、運転資金の余りを使いきってしまって、8億円の資金不足となっています

これも一般的な現象なんですが、注文住宅メインとする工務店は、手元に資金が余るので、下職の手余りをなくすために、もしくは不動産で儲けをかさ上げしようとして、この運転資金の余剰を使い販売用不動産を購入し、分譲住宅も販売しようとするケースが散見されます。

工務店の資金繰りでの3つの注意事項

ポイント1:売上が減少する局面は要注意

工務店の運転資金の余剰は、売上が減少する局面では逆回転が起こり、急速に資金が減少していきます。なので、販売用不動産に余剰資金が使われ、資金が固定化している場合、この縮小に伴う急速な資金の減少を、銀行からの借入で埋めることになります。短期的に資金が不足するので、前広に銀行へ借入を依頼しておかないと資金ショートを起こしかねません。

ポイント2:期初の資金不足に要注意

決算数値をよく見せようとして、決算期末に住宅の引渡しを増やす傾向があります。この場合、決算期末の現金は、顧客からの回収資金が積みあがるために増加します。ただ、決算期末明けの「期初」には、引渡した物件の材料代・手間代の支払いがあるため、大きく資金が流出していきます。

先ほどの住宅メーカーのケースでも、2021期末に104億円と資金が余り、2021第1四半期は8億円の資金不足となっていて、運転資金差はなんと112億円もあります。もし販売用不動産を購入して在庫となっている場合は、この差を銀行借入で埋める必要があります。期末に資金が余っていても、決算の翌月・翌々月の期初はあまり安心できません。

ポイント3:分譲住宅は先行投資で資金が寝る

販売用不動産を買って分譲住宅を販売する工務店は、土地や資材の購入、手間賃の支払が販売よりも先行することから、運転資金が必要となります。つまり、資金が余るのでなく、先行投資用の資金が必要となります。注文住宅のみを行っている工務店が、新規事業で分譲住宅販売へ参入する場合は、資金繰り面での手当ても十分におこなっておく必要があることは言うまでもありません。

最後に

以上の様に、注文住宅メインとする工務店と、分譲住宅を得意とする工務店とで、資金の状況はまったく正反対となります。確かに、分譲住宅は良い土地が仕入れられれば、利益や下職への仕事の確保などに貢献します。

ただ、上記の様に資金の状態が正反対なので、この点に注意して経営をしないと、資金ショートという大変なしっぺ返しに合う可能性があることも、同時に注意しておく必要があると思います。できれば、販売用の不動産は、運転資金の余剰でなく、利益を貯めたお金(内部留保)で買いたいものです

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