事業承継へまず一歩

経営関連

「事業承継」とは、ご存知の通り、会社の経営を現経営者から後継者へと引き継ぐことです。経営者にとって、事業承継はゆくゆく、必ず考えないといけないテーマです。特に、60歳を超える頃からはその検討は必須の課題と思われます。

事業承継は避けて通れない課題であるにもかかわらず、漠然と理解されている程度で、具体的にどのようなものかを把握している経営者はそう多くありません。今回は事業承継について、その概要と進め方を考えてみたいと思います。

事業承継の現状

2023年9月に中小企業庁が改訂した中小M&Aガイドラインには、中小企業の後継者の現状について「日本全体において、2025年までに、平均引退年齢である70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人、うち約半数の約127万人が後継者未定と見込まれている」とあります。つまり、経営者がリタイアする可能性のある企業のうち、約半数は後継者が決まっていないということです。

ちなみに、2022/3/4帝国データバンクのレポートによると、社長の平均年齢の推移は以下の様に年々上昇しています。

一般に、事業承継の準備には後継者の育成期間も含め、5~10年程度掛かるとされています。後継者が決まっていない中小企業が、このまま何の対策も講じなければ、廃業を選択せざるを得なくなります。

仮に127万の企業が廃業に追い込まれてしまった場合、雇用喪失や連鎖倒産を招き、日本社会全体に大きな影響を与えかねません。このように、事業承継は喫緊の社会問題となっているのはもちろんですが、経営者にとっても事業承継が、会社の行方を左右する大きな課題と言っても過言ではないのです。

事業承継の体系

事業承継を体系化してみると、「親族内承継」「従業員承継」「第三者承継」の3つに分けて考えることができます。以下その特徴を説明してみたいと思います。

親族内承継

相続などの観点から望ましいのが、「親族」への事業承継です。以前は、子供など親族への承継が事業承継全体の9割以上を占めていました。
ところが、少子化の影響や大学進学で地元に残らず都市圏で就職する子息が増えたことなどが主因となり、親族への承継は減って、最近では6割を切っています。また、親が子供に継いでもらうつもりでも、親の苦労を近くで見てきたことなどから子供には全くその気がない、と言ったこともその一因かもしれません。

従業員承継

親族承継ができない場合、次に考えられるのが、経営能力がある「社員や役員」への承継です。しかし、社員等の承継にかかる資金調達や会社の借金が障害となることが多くあります。
具体的には、業績が黒字で無借金経営の会社では、社員等が支払う買取り価格が高額となるため、その購入代金の調達が難しくなります。
逆に、借金が多い会社の場合、買取り価格は低く抑えられますが、保証や担保などの関係で社員等が借入を引き継げない、もしくは、引き継げる資力があっても、社員等にそれを引き継ぎにためらってしまうなどです。

第三者承継(M&A)

親族や社員等へ事業承継ができない場合、残る選択肢は、M&Aによる「第三者」への事業承継です。
日本では、まだM&Aに抵抗感があり、子供等に承継できない場合は「廃業」を選択する場合も多いようです。ただ、廃業には、社員の失業や取引先への悪影響など問題も多々あります。M&Aは廃業と比べ、社員の継続雇用や取引先との関係、そもそも経営者の負担や利益の点でも望ましいと思われます。
中小企業庁もM&Aによる事業承継を推進しており、中小企業におけるM&Aの実施件数は年々増加傾向にあります。

早めの着手が肝心

事業承継には、後継者の選定や後継者の育成・教育、業務の引継ぎなど、実行までに10年程度の時間が必要と言われています。経営者としては、事業承継に向けた準備の重要性を認識や、平均引退年齢が70歳弱であることなどを勘案して、60歳頃からの承継準備がポイントとなります。
言い換えると「誰に、いつ、どのように」事業承継するかという方針をしっかりと決め、まずは動き始めることが、円滑な事業承継の実現にとって非常に重要となります。


参考ですが、2022/3/4帝国データバンクのレポートによると、新旧社長交代時のそれぞれ平均年齢は以下の様になっています。

事業承継へまず一歩

事業承継の必要性は分かっていても、初めてのことで何から手を付けていいのか分からないものです。
一度、顧問の税理士や取引金融機関、公的支援機関など、信頼の置ける相手に相談してみましょう。会社の将来について、一緒になって考えてくれるはずです。

その公的支援機関として、各都道府県に設置されている「事業承継・引継ぎ支援センター」があります。事業承継の概要をつかむには、有益な選択肢の一つとです。気軽に相談してみてはどうでしょうか。

スムーズに引継ぐために

意外に事業の承継について子供と話せていないケースも多くあるようです。子供が「継いでくれるはず」と思っていたが、実際相談してみると「継ぐつもりはない」と考えていて、子供との認識のギャップに戸惑うケースも多いと聞きます。


子供が継がないと分かって、従業員承継やM&Aを考えるにしても、相手探しは全て「ご縁」であり、一朝一夕に相手先が見つかるとも限りません。スムーズな引継ぎためにも、早めの相談が大切です。

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