商店街に対する期待
中小企業庁が運営する「ミラサポplus」には、「いま商店街は、来街者の減少、空き店舗の増加、店主の高齢化、後継者不足など、様々な課題に直面しています。ライフスタイルの変化、ショッピングモールといった「郊外型商業施設」の出店などにより、地域商業をめぐる環境が大きく変わるなかで、活力を失いつつある商店街も少なくありません。」とあります。
確かにそうなんです。近郊の商店街もそうですし、故郷の商店街もそういう状況だと思います。
また、「商店街は、地域の商業集積エリアであるとともに、地域コミュニティの拠点としての役割も担っていました。商店街を元気にすることは、地域コミュニティの再生、地域の魅力向上にもつながります」とも続けています。私も、仲間や家族と共に商店街の書店やその家具屋、飲食店・喫茶店にお世話になりました。
今回は少し商店街活性化の課題について考えてみたいと思います。
繁盛店による商店街の活性化
商店街の活性化の鍵は「商店街のなかの繁盛店を増やすこと」とよく言われています。少し、「ミラサポplus」にあった事例について触れてみたいと思います。具体的には、集客力のあるお店やスポットを「集客の核」にしてにぎわい創出につなげていくとの施策が多いようでした。
福井県の敦賀市商店街連合会
かねてから、店主が地域住民に専門知識を提供するワークショップ「まちゼミ」や、商店街を回遊する「スタンプラリー」、個店の活性化に向けた「研修」などを開催し、個店の魅力を高める活動を行っています。いまや「まちゼミ」の開催は全国の商店街に広がっています。
岡山県岡山市の奉還町商店街
また、参加店のレシートを別の参加店に提示すると、サービスや特典を受けられるイベント「ぐるり奉還町」を行い「お店が紹介しあう」ことで、商店街全体の集客力を高めています。
大分県豊後高田市内8商店街
「ミラサポplus」の記事からは離れますが、私の故郷である大分では、豊後高田市の商店街活性化の事例が有名です。「昭和」をコンセプトに商店街を再編したのです。
具体的には、各商店のパラペットを外し、以前の看板をむき出しにした「昭和の建築再生」や各店に伝わる珍しいお宝を「昭和の歴史再生」として展示。そして、「昭和の商品再生」として、その店自慢の商品販売を実施、お客さんと直接対話を積極的にする「昭和の商人再生」といった施策です。
それぞれの「個店の魅力」を「昭和」というコンセプトで串刺しした事例と言えます。
個店を磨く
以上のように、商店街の活性化は「商店街の繁盛店を増やすこと」が必須となります。繰り返す必要はないかと思いますが、商店街は個店の集合体なので、「繁盛店の増加」が、商店街は活性化に繋がることは言うまでもありません。
商店街のニーズとタイプ
小売における商店街のシェア
一方で、飲食店や鮮魚店などの最寄品※1ではなく、衣料品や家電のような買回り品※2の店は「郊外型商業施設」に顧客を奪われやすいのも事実かもしれません。
※1 最寄品︓消費者が頻繁に⼿軽にほとんど⽐較しないで購⼊する物品。食料品、家庭雑貨など |
※2 買回り品:消費者が2つ以上の店を回って⽐べて購⼊する商品。ファッション関連、家具、家電など |
2020/5/19付け中小企業庁のレポート「地域コミュニティにおける商店街に期待される新たな役割と⽀援のあり⽅」によると、最近では商店街の小売額のシェアは大きく減少しています。
商店街のタイプ
ところで、商店街と一言で言っても、様々な形態があります。野菜やお肉など最寄品を中心とする商店街から、高級な宝飾品や腕時計といった商品を販売する商店街まで幅広いタイプがあります。以下は、上記のレポートで述べられているタイプ分けです。
近隣型商店街 | 市町村 | 最寄品中⼼の商店街で地元住⺠が⽇⽤品を徒歩⼜は⾃転⾞等により買い物を⾏う商店街 |
地域型商店街 | 市町村 | 最寄品及び買回り品が混在する商店街で、近隣型商店街よりもやや広い範囲から来訪 |
広域型商店街 | 中都市等 | 百貨店、量販店等の⼤型店があり、最寄品より買回り品が多い商店街 |
超広域型商店街 | ⼤都市等 | 百貨店、量販店等の⼤型店があり、有名・⾼級専⾨店を中⼼に構成され、遠距離からも来街 |
また、その割合ですが同レポートでは以下となっています。
シェア的には、徒歩や自転車で手軽に肉・野菜といった最寄品の買い物ができる「近隣型商店街」が一番多く、その次は最寄品に加えて衣料品や家電など買回り品も扱う「地域型商店街」、買回り品を中心とする「広域型商店街」、高級専門店が主な「超広域型商店街」となっています。
特に、車や電車などで移動して「買回り品」を買う「地域型商店街」や「広域型商店街」は、「郊外型商業施設」と品揃えが被りやすく、顧客を奪われやすい傾向があると思われます。
商店街の中・長期的な構造変化の必要性
コンパクトシティに対応する業態・タイプへ
多くの地⽅公共団体では、少子高齢化やそれに伴う人口減少から、中⼼市街地へと促すコンパクトシティ化を進めています。
一方で、買い物は「郊外型商業施設」でしかできない状況も生まれ、ギャップが広がりつつあります。今後老齢人口も増えることから、自動車免許の返納も増えて、買い物難民となる人も増えてくるかもしれません。
実は、今後商店街に求められるニーズの一つには、このギャップを埋める「近隣型商店街」への構造転換にあるのかもしれません。
具体的には、コンパクトシティ化に伴う「自動車」から「徒歩や自転車」でのアクセス、通信販売で済む「買回り品」から毎日の買い物が必要な魚・肉・野菜・日用品などといった「最寄品」へのシフト、さらに高齢者一人ひとりに寄り添うことができる、加えて子育て中の親子に細やかなケアサービスなどの提供ができる、そんな商店街です。
顧客のニーズに寄り添う変化
環境変化の激しい時代であり一般の事業者も既存の商売やり方だと、縮小均衡に陥る可能性があります。また、個人でも人生100年の時代を迎えてリスキリングが必要となってきています。
商店街においても、個店の魅力を高めることも非常に重要です。
一方で、中・長期的にはコンパクトシティ化の流れに沿い、業態・タイプを今以上に日々の買い物に便利な「近隣型商店街」へ変化させ、消費者のニーズに寄り添うことが求められているのかもしれません。