産業の集積化(産業クラスター化)とは
地方経済振興において、産業の集積化(産業クラスター化)は重要な役割を果たしています。
産業集積とは、特定の地域に相互に関連する企業や機関が集中することで、競争力や生産性の向上を図るものです。
経済の再生に成功した地域においては、産業集積化の効果を活用し、地域の産業と企業の生産性と競争力を高めている実例が国内外において多くみられます。
地域における産業集積や知的集積の活性化によってクラスターが形成されてゆくことが、地域産業の競争力の向上や地域経済の活力の回復につながるものと期待されています。
産業集積化の効果
産業集積は、地域内に関連企業や支援機関が集まることで、情報交換や技術の共有が容易になり、イノベーションの促進や生産性の向上が期待できます。
産業集積の効果として、主に以下の点が挙げられます。
生産性の向上
域内の産業集積度が高いほど、当該産業の労働生産性は高くなる傾向があります。
具体的には、輸送・通信費用や取引費用の削減、関連企業が相互に補完しあうことで効率的な分業体制の構築などです。集積地には新たな人材や企業、投資がひきつけられるという、最大の効果があります。
イノベーションの促進
企業同士や大学、研究機関が連携することで、新技術や新製品の開発が促進されます。
もうひとつは、イノベーションの可能性です。集積地では連携だけでなく競争も激しくなります。技術開発競争は多くのアイデアを生み出し、それが新しい事業の芽となります。
それに加えて、競争と協力が混在することでイノベーションの連鎖も期待できます。
雇用の創出
当然のこととして、産業集積は地域の雇用機会を増やし、地域経済の活性化に寄与します。
集積化の結果として、ノウハウなどの経営資源が、地域人材に蓄積されていくこともあります。
集積化の定量的分析
少し古いレポートですが、定量的な分析として電中研ニュース434(2006/11)に、各効果が1%変化したときの生産性のへ変化が、以下のグラフがあります。
製造業の場合は異業種集積よりも同業種集積の方か、集積効果が高いことが解ります。

産業集積化の事例
自治体における産業集積化の成功例として、以下の事例が挙げられます。
事例では、地元企業や研究機関、行政が連携し、地域資源や技術を活かした産業クラスターの形成に成功しています。
高知県馬路村のゆず加工品集積化
人口約700人の馬路村では、特産のゆずを活用した加工品の生産を推進しています。
地元農協と住民が協力し、ゆず製品の開発・販売を行い、全国的なブランドを確立しました。
これにより、地域経済の活性化と雇用創出に成功しています。
この事例は、小規模自治体でも地域資源や特性を活かし、住民の協力を通じて産業クラスターを形成し、地域経済の活性化に成功していることを示しています。
新潟県燕三条地域の金属加工の集積化
新潟県燕三条地域の金属加工クラスターはあまりにも有名です。
燕三条地域は、江戸時代に和釘の生産から始まり、時代の変化に応じて刃物や洋食器など多様な金属製品の製造へと転換してきました。
この柔軟な適応力と高度な技術力により、現在では金属加工の一大集積地として知られています。
福井県鯖江市の眼鏡フレーム産業集積化
鯖江市は、日本国内の眼鏡フレーム生産シェアの9割以上を占める産地です。
地元企業と産学官の連携により、新素材の開発や精密加工技術の向上が進められ、高品質な眼鏡フレームの生産で世界的な評価を得ています。
湯布院町における温泉観光産業クラスター
大分県内においては、民間人主導で、自然景観を大切にした保養温泉地づくりに成功した温泉観光産業集積があります。中心人物の一人の玉の湯会長は政府の「観光カリスマ百選」に選定されています。2023年には年間約400万人の観光客が訪れています。
私の住む佐伯市の場合
それでは、私の住む佐伯市ではどうでしょう。佐伯市には多様な産業があります。
その中で、「強み」を持つ産業クラスターとしての成長の可能性がある産業の事例としては、佐伯湾に広がる造船業や堅田地区における金属加工、豊後水道沿いに集積が進む漁業・水産加工などが挙げられるかもしれません。
産業クラスターを育成するため
産業集積の効果を最大限に引き出すためには、量的な拡大だけでなく、質の向上が求められます。
他の地域との競争優位を持つためには、地域独自の「強み」を活かした集積を形成することが重要で、その上で価格をはじめ質の向上は必須と言えるでしょう。
さらに、地方自治体が主体的に戦略を策定し、地域の実情に即した産業振興策を推進することが求められます。具体的には、海上・陸上の交通網や、通信網、進出する用地の確保、地域の利害調整など多岐にわたります。
最後に
東南アジア、特に中国や台湾、韓国へのアクセスが良い、佐伯市においての産業の集積化は、経済振興や雇用先の確保において大きな可能性を秘めています。

しかし、その効果を十分に発揮するためには、課題を認識し、地域の特性やニーズに応じた戦略的な取り組みが不可欠で、待ったなしと課題と言えます。