補助金申請における経営計画等の考え方
補助金の申請は、前回のブログで「新たな投資等に関して『事業計画』の作成が必須となっている」と言いました。一方で、事業者支援機関の窓口相談を行っていますが、その際に「事業計画ってどう書けばいいのですか?」「結構書かないといけませんね!」との質問や考えをよく聞きます。
確かに補助金申請には、結構な量の『事業計画』を書き込む必要があります。ただ、この書き方にはコツがあり、このコツを掴み創業時の想いがあれば素直に筆が進んでいけると思います。
今回は代表的な補助金の一つである「小規模事業者持続化補助金(一般型)」(以下「持続化補助金」)を題材として、『事業計画』の考え方について、お話したいと思います。
持続化補助金の『事業計画』※は2つのパーツに分かれています。会社全体のビジネスモデルの説明となる「経営計画」の部分と、今回申請する新規事業の説明部分である「補助事業計画」です。
今回は『事業計画』説明の第一弾として、「経営計画」の部分の説明をしてみたいと思います。このブログ位置づけとしては、『事業計画』作成の導入として捉えてもらえれば幸いです。
※公募要領にはA4サイズで最大8ページと書かれています。「最大」ですが、最大近くまで丁寧に書き込む事業者も多いと思います。
経営計画(事業計画)とは
「経営計画」は大上段に振りかぶった言葉で、難しい印象があるかと思います。ニトリの家具を組み立てたり、プラモデルを組み立てたりしたことがあると思います。この時、箱の中に「設計図」が入っていなければ、家具やプラモデルを作り上げることができますか?事業においての「設計図」にあたるのが、「経営計画」なんです。実は、事業を創業や経営する方の中に、この「設計図」を作っていない方も結構多いと思います。
以下は、2016年1月中小企業庁の「小規模事業者の事業活動の実態把握調査」から抜粋した図です。
やはり、設計図である「経営計画」を作成した方が、売上高が伸びる傾向があることが言えると思います。前回のブログで補助金は、将来実行する「投資」に使うと言いましたが、補助金を出す行政の立場からすると、でききるだけ補助金を有効に活かしてほしいと思っているのでしょう。なので、補助金を出すときには、「経営計画」を作ってほしいとしているのです。
経営計画の考え方は
実は「事業計画」を作るのは意外と簡単です。感覚的な流れで作成できるんです。
- 自分の振り返り:経営理念、ビジネスモデル、自社の強み・弱みは
- 周りをみて:事業環境(販売市場の機会や競合関係の脅威)は
- 会社の体力は:自社の財務状況はどうなっているのか
- だから今何をして:既存の事業のビジネスをどう維持・改善するのか
- 新たなビジネスチャンスへどう対応:新規事業(補助事業)へ挑戦
といったような流れで考えていきます。
「自分の振り返ってみて⇒周りはどうなっているのか⇒新しいことをする体力はあるのか⇒ついては、今の事業をどう強化し⇒新たなビジネスを加え業容拡大を図る」といった流れで考えるのは違和感なく普通ですよね。
持続化補助金の「経営計画」は
持続化補助金の「経営計画」も、上記と同じような項目を書き込む構成となっています。具体的な項目は「企業概要、顧客ニーズと市場の動向、自社や自社の提供する商品・サービスの強み、経営方針・目標と今後のプラン」となっています。
この持続化補助金の項目は、私の触れた「感覚的な流れ」の項目と書き込む順番が違うので、対比させて以下の表としましたので、ご参考としてください。
補助金の項目 | 感覚的な流れ | 具体的な項目例 |
1.企業概要 | 経営理念 既存のビジネスモデル | ・社長の経歴や創業時の想い ・会社のビジネスモデルの概要(誰に、何を、どのように、売っているのか) |
2.顧客ニーズと市場の動向 | 市場の概要 ビジネスチャンス(機会) | ・販売市場の概要(市場規模拡大・縮小) ・市場の動きと新たなビジネスチャンス |
3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み | 同左 | ・自社と競合他社を比較して、強みは。例えば「立地が良い」「顧客台帳が充実」「業歴が長い」など ・社長の経歴から他社にないノウハウや人脈 |
4.経営方針・目標と今後のプラン | 既存事業のビジネスをどう維持・改善するのか 新規事業へ挑戦 | ・市場完了の動向を踏まえて既存事業を強化するのと併行して ・機会と強みを活かして、新たな事業(補助事業)へ挑戦 ・売上高増加へ寄与(〇年後に売上高が✕万円増加するので、既存と合わせて△万円となり、昨年度に比較して◇%ほど売上が増加) |
上記は、作成のあくまでもご参考として理解してください。上記では、自社の「弱み」や「財務状況」には触れていませんが、私見ですが「持続化補助金」においてはどちらでも良いと思います。ただし、会社の「経営計画」作成においては、この2つの要素は、考慮する必要があると思いますので、手元では用意しておくのが良いと考えます。
「経営計画」作成の補足
補助金申請には当然のこととして、審査する方がいますので、読みやすい・理解しやすい内容とすることが肝要となります。以下、それらの工夫を列挙しますので、ご参考としてください。
- 文章には、「1.⇒(1)⇒①⇒(i)」というように番号と項目建てをして読み手が理解しやすい様に作成
- 図や写真、表などを適宜効果的に使って、文書を視覚で補完し、読み手の理解を促す
- 言葉だけで説明するのでなく、業界団体や政府の統計などを利用して客観的に説明する。数値をグラフ化するのも良い
- 公募要領の「加点事項」や「審査の観点」のところはしっかりと読んで、対象項目があれば漏らさず書き込む様にする
などです。
最後に
少し長く分かりづらい文章となってしまいましたが、「補助金申請」においてだけ「経営計画」を作成するのは、確かに面倒です。
ただ、発想を少し変えて、「経営計画」を作成するチャンスだと思うのが良いかもしれません。冒頭に言いましたが、経営にも「設計図」は必要です。ぜひ、これを機会に作成してみてはどうでしょうか。
次回は、第二弾として、「補助事業計画(新規事業計画)」について説明してみたいと思います。