日本には様々な課題がありますが、その中でも地方にとって、大きなテーマの一つは「少子化」だと思います。今回は、少子化の問題について考えてみたいと思います。
少子化の現実
まず、少子化の現状はどうなっているのでしょうか。2022年の出生率(合計特殊出生率)は、1.27と人口置換水準※1を大きく下回り、OECD諸国※2の中でも最低レベルとなっています。
具体的には、年間出生数が80万人を下回り、過去最低を更新しています。地域的には、東京都1.04など都市圏の出生率が低く、私の故郷大分県1.49など地方は高くなっています。
※1:人口が増加も減少もしない均衡した状態となる出生率の水準のことです。現在の日本の人口置換水準は、2.07となっています。
※2:EU加盟国22か国以外では、日本、イギリス、アメリカ合衆国、カナダ、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランド、スイス、ノルウェー、アイスランド、トルコ、韓国、チリ、イスラエル、コロンビア、コスタリカの16か国で、都合38か国です。
現在の日本の人口は12,400万人ほどですから、80万人で割ると155年となります。155年生きる人はいませんから、当然に人口は減少していきます。
少子化の要因
非婚化・晩婚化の進行
少子化の原因の一つには、非婚化・晩婚化の進行があります。結婚や出産に対する価値観が変化し、生涯未婚率の上昇や晩婚化が急速に進んでおり、出生率低下の一因となっています。
国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2024)」によると、生涯未婚率※1は上昇しており、2020年には男性が28%、女性が18%と過去最高になりました。ちなみに、1990年時では男性が6%、女性が4%と大幅に低い状態でした。
※1:45歳~54歳までの人の未婚率を平均して50歳のときの未婚率を算出したものです。50歳のときに未婚の人は将来的にも未婚であると推定し、生涯未婚率の数値としています。
同社の研究者の間では、このままの状態で未婚率が推移すると、2030年には男性の3人に1人、女性の4人に1人が生涯未婚者になると予測されています。
初婚年齢の上昇も男女とも上昇傾向が続いています。初婚年齢は、2021年時点で、男性31歳、女性30歳と上昇傾向にあり、結婚・出産が遅れる傾向にあります。
経済的な不安
若年層の雇用不安や収入の減少が、結婚・出産を躊躇させる要因となっています。
具体的には、厚労省の少し前のデータですが、1994年の世帯所得のピーク664.2万円から2015年は18%と大きく減少して545.4万円となってしまっています。
伸びない所得を背景に子育てに逡巡する人も多くなっている可能性があります。
また、女性の社会進出が進んだ一方で、育児休業制度の利用率が低いなど、改善されえつつあるとは言え、仕事と子育てを両立できる環境が十分ではありません。
仕事と子育ての両立が困難な状況も、子どもを産むことにためらいがあるのかもしれません。
少子化がもたらす影響
経済の活性化や社会保障制度の問題
人口減少は、地域社会の活力を低下させ、医療や福祉サービスの提供が困難になるなど、地域の維持が困難となる可能性があります。
特に、生産年齢人口の減少は、経済成長の鈍化を招き、社会全体に負の影響を与えます。現在、高齢者人口が増加する一方で労働人口が減少し、今後もその減少が続く場合、社会保障制度の維持が困難となる可能性があります。
具体的には、厚労省の資料では1990年時点での65歳以上の人の人口に占める割合は12%であったものが、2020年には29%となっていますが、30年後の2050年には38%と予想されています。現在でも現役世代2.5人で1人の高齢者を支える状況が、30年後は1.7人で支えることになります。
地域の具体例
私の故郷である大分県佐伯市の状況はどうでしょうか。厚労省のデータでは、佐伯市の2022年における年間出生数は、304人でした。6年前の2016年は479人、2010年は513人で、年々減少しています。
2022年生まれの子どもが小学校1年生に入学する時の小学生数は、直近6年間の出生数を足し合わせると2,083人と予想され、2016年生まれのケース3,002人と比較して、ほぼ1/3の生徒が減少していることになります。
少し乱暴な計算ですが、現在小学校が22校ほどありますので、1校平均136人として7校ほどの生徒数が減少していることになります。
また、県南地域の佐伯市は大分県内でも以下の様に出生数が減少しています。他の県南地域も同様の傾向を示しています。
県北や県央は、県庁所在地の大分市や国東半島にある大分空港に近かったり、福岡県へのアプローチがし易かったりなどとの理由から出生数の低下が県南より低い状況です。
少子化解消の対策
それでは少子化に歯止めをかける対策はどういったものになるのでしょうか?
少子化は経済、社会、文化など、様々な要因が複雑に絡み合う複雑な問題であり、短期的な対策だけでは解決できません。
経済的な支援、育児環境の整備、男女共同参画の推進など、多角的な対策が求められます。
一方で、少子化対策には多額の費用がかかるため、財政的な制約の中で先進的な取組みの研究や独創的な発想により、効果的な政策を立案することがポイントとなります。
しかし、長期的な視点に立った社会構造改革が求められていますが、世界的に見ても依然として効果的な解決策は見つかっていません。
当然のこととして、出生率の回復に向けた取り組みをさらに強化することは必須です。
併行して、少子高齢化社会に対応するための社会システムの改革を進めていく必要があるのも事実でしょう。